海の埋め立て地の井戸

海を埋め立てた場所で地質調査と井戸工事を行った。

ある企業の工場新築に伴ったものだ。

現場は鳥取市街地から北西に約6kmの場所にあり、かつては賀露港として知られ戦国時代には毛利氏の因幡進出の際に使用されたり、秀吉の鳥取攻めの拠点としても登場している場所だそうだ。

昭和50年頃より本格的な港湾工事が行われ、現在では山陰地方東部の海の玄関と言っても良いくらいの立派な港湾となっている。

写真にも写るように、現場はもろに海を埋め立てた場所であるため、海水では無い地下水を出すのはかなりの賭けになることを想定した。

掘削工法はロータリー工法で行われた。 この工法はダウンザホールハンマーより削孔スピードは劣るが軟弱な層や砂層には比較的向いており、掘削深度もダウンザホールハンマーより遥かに深くまで掘り進むことが出来るので、温泉掘削や油田掘削などはこの工法で行われる。

掘削中のデータやスライム(掘りくず)などで、何mに水脈があったか、何mの水脈が良さそうかを判断して仕上げのパイプを挿入する。

パイプ挿入後は海水や汚水が入らないようストレーナ上部にセメンチングを施す。

セメントが硬化次第ポンプを入れて汲み上げ試験を行う。

冒頭でも説明したが現場は立派な港で、写真左にも写っているが、大型の船も停泊している。

この湾内でたまに魚釣りをするが、キスやコチやハゼ、シャコなどが良く釣れる。 たまにチヌや大きなセイゴなども釣れているようだ。

休日を挟みセメントも硬化しているのでいよいよポンプで汲み上げることとした。

施工には最善を尽したが汲んで見るまでは分からない・・・海水であるのか真水であるのか・・・ドキドキの瞬間である。

そしてポンプからノッチタンクに流れ出る水を口にしてみた・・・。

「塩っぱく無い・・・!!」

大成功である。  海の下の地中にも真水が流れていることが証明されたのである。

正に地下の神秘を学ばさせて頂いた現場となった。

そして我々の業界にとっても画期的な実績となり、営業のエリアが広がってくれたのである。

施主の思い切りの良さに本当に感謝いたします。