チリ落盤事故

今、世界はチリの落盤事故のニュースで大騒ぎです。

特に我々ボーリング工事業界はとても注目しているニュースだと思います。

全員助かり本当に良かったと心の底から思っております! おそらく世界中の人々も天国と地獄を現実的に身につまされたのではないでしょうか。

と同時に今のボーリングの技術が いかに優れているかを世に知らしめたことと思います。

まず・・・落盤があり、地上へ帰る道を閉ざされてしまい途方にくれる数日間・・・あきらめかけたその時・・・自分達の所に地表からドリルが到達し、喜びと希望に満ちあふれた瞬間・・・そしてそのドリルが逃げ去る前に自分達のメッセージを紙に書いて祈るように詰め込む・・・。

それでも・・助け出されるまでは地中に閉じ込められた作業員達の心は想像を絶する葛藤と戦っていたと思います。 地表でもボーリング作業に携わった救助隊もなかば信じ、なかば疑いながら任務をつとめていたのではないでしょうか。

我々の業界の方々であればよく分かると思うのですが、地面に孔を開ける・・そしてその孔を保持させる苦労・・・

それは深くなればなるほどしんどいもので、あらゆるトラブルを想定し、地層との駆け引きを行いながらリスクと戦っていかなければなりません。

ボーリングする場合、もし最新の透視カメラがあったとして掘り進む先が見れたとすればどれだけやり易いものか・・・

皆さまのお宅の庭の下がどのような地盤であるか、50cm下の土が何であるかさえも瞬時には答えられないと思います。

やはり実際スコップで掘ってみないと、石ころが埋まっているのか、空き缶が埋まっていたのか、木の根っこが埋まっていたのか、ミミズが眠っているのか、100%の断言はできないはずです・・・わずか50cm下でも・・・。

したがって700m下のピンポイントの目標物に到達するなんて本当に神業です・・・。

例えば、一粒の大豆を、長さ1mの箸でつまむ事が出来るでしょうか・・・おそらく難しくてあきらめてしまうでしょう・・・。

次に示す絵はボーリングメーカーのカタログの表紙を拝借させたいてだきましたが・・・

この断面を見て分かるように、地層は色々な時代を越え色々な硬さの変化があり、ボーリングのドリルも深さが増すほどその地層の変化に惑わされてしまうものです・・・。

なので、今回のキーポイントはまず手紙を受け繋げれたあの希望を求めたボーリングに全てがあったのではないでしょうか。

あの工法はダウンザホールハンマー工法と言い、私の知っている限り世界でもっとも岩盤を早く掘ることの出来る工法で、孔のサイズ(10cm程度)もこの工法で最も効率よく掘削できる径で掘られてますので、地盤に合った最善のボーリング技術が屈指されていることは間違いございません・・・とは言え、やはり700m下の標的に命中させることは大変難しいことであります。

そしてその孔が基準となり、その後の展開が切り開けました。

もちろんその後の直径70cmの救出用のボーリング工事も至難の技であったことは間違いございませんし、その孔にワイヤーロープでゴンドラを降ろし、一人一人救出していくこともとても危険で緊張感のある作業でした・・・。

直径70cmの孔を700m掘ってそれを保持させる・・・それも難易度の高い工事ですし、本当によくやったと思います・・・

そしてその後のゴンドラ救出も とても危険極まりなく、もし途中でわずかでも孔壁の崩壊があれば、孔に対してギリギリサイズのゴンドラはにっちもさっちもいかなくなってしまうのではないかと・・・

地盤は国や地域により様々で、崩れやすい地域、崩れにくい地域とあり、今回のチリ落盤事故の場所は 実は本当は崩れにくい地域であったのだと思われます。

現地の断面図などを見ると、孔は蟻の巣のように地中に掘りめぐらされておりますので、よほど地盤がしっかりしていないとあのようにはいかないと思います。     また我々の観点から、700mの深さでも地下水位が無いというのも 標高の関係でしょうか・・・すごいなとも思っております。

ちなみに日本は狭い国にもかかわらず地層が複雑で、地下水などの影響も多い為、ボーリング単価が他国に比べ割高になってしまうようです・・・

それはさて置き、今回の事故で彼らは英雄になり、今後の生活も一挙に変わることでしょう・・・

でも・・・何かのためにがむしゃらに働いたこと・・・孔をうがつスピリッツは忘れないでほしいと、私は心の底から願っております。